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いのちが集まる学校菜園づくり


2019年4月にクーデターが発生し、国家の大きな変化の渦中にあるスーダン。

クーデターの要因となったのが、2018年12月から続いていた市民による反政府デモでした。

スーダン国内の政府関係者による汚職や経済悪化、貧困は、ブラックマーケットの存在や政府による資源管理、変動しやすいレート、ガソリンの不足、主食であるパンの値上げなど人々の日常生活に影響を与え続けていました。

国家全体が抱える貧困問題を解決するには、スーダン国内の政治的安定と国際社会の協力がより求められていますが、私たちが子ども達の健康な発達に向けて行動できる第一歩として、村の学校での学校菜園の設置を開始しました。

学校菜園という方法を選んだ理由は、主に以下の3つです。

①コミュニティ全体での子どもの発達を見守るため、“学校”を中心に地域住民の関わりと協力を向上する。

②学校自身が、外部支援がなくても自立して持続的に実施できる活動を導入する。

③コミュニティ自身が持っている環境的・人的リソースを活用して、子どもや学校の生活改善に寄与する。

農業は村の人々にとって身近であり、現地ならではの知識や技術をもっている人が必ずいます。また、校内には空き地がありながら手入れされておらず有効に利用されていませんでした。

コミュニティの人々や先生達と話し合い、学校菜園は子どもからおとなまで地域の人々が持続的に関わりやすく、年月を重ねるにつれて成果も大きくなることが期待されることがわかりました。

2019年3、4月に、ハルツーム州の遠隔農村地にある2つの公立小学校にて学校菜園を設置しました。

学校菜園活動は私たちとしても初めての試みでしたが、利用できる土地の面積測定、菜園のデザイン、植える植物の選定などゼロから自分たちの手で始めました。

植物が植えられるよう土地を耕したり、ブロックをひとつひとつ並べセメントで固めたり、より耕作に適した土を加えたり…と、地域の人々と一緒にすべて手作業で造り上げていきました。

菜園を取り入れている学校はスーダンでもほとんどありません。しかし作業を手伝ってくれる住民の方々はすぐに“学校菜園”というアイディアを理解し新しい発想を次々に提案してくれ、毎日スタッフと予想以上にクリエイティブな活動をしていました。

学校はちょうど長期休みに入っていたので子ども達は通学していませんでしたが、噂を聞きつけ毎日子ども達が集まり、作業を手伝っていました。

ブロックとセメントで菜園の枠組みができ栽培に適した土を入れ、やっと土台ができたあとは、花々や木々の植え込みと種まきです。

もちろん校内に庭園などなく、村自体がほぼ茶色に覆われた土砂漠の場所です。シリア人スタッフの配慮から、見た目にも美しくなるようにと花々も植えました。菜園としてはなくてもよいものかもしれませんが、これが後に思いもよらない効果を引き出してくれました…

現地で育てやすく需要の高い農産物として、果物はレモン、オレンジ、マンゴー、グアヴァの木を植え、野菜はトマト、ナス、オクラ、ルッコラの種を蒔きました。

すべて順調に進むなか、日々もどかしく感じさせられたのは水です。

ナイル川から地下水を引いて村々には水が供給されていますが、全日通して水が通っていることはありません。1日のうちに必ず断水があり、水が通っていたとしてもホースで「チョロチョロ」程度なので常にタンクに溜めておく必要があります。菜園には水が不可欠なので、エンジンモーターを導入して地下水の供給能率をアップしました。

果物や野菜が収穫できるようになるにはまだまだ年月がかかりますが、菜園の完成後すぐに、大きな変化がみられました。

花々や木々に誘われて、今まで校内でいなかったカラフルな蝶々が現れたり、多くの小鳥のさえずりが聴こえるようになりました。一気に緑が多くなった学校は、植物だけでなく動物も増え、“いのち”のエネルギーを感じられる場所となりました。

また、授業がなくても先生たちが学校に集まり、菜園を観ながらティータイムを楽しんだり、木陰で礼拝をしてそのまま菜園でリラックスする住民の方々など、地域の人々も集まるようになりました。

自然が少し増えるだけで人も集まり、一気にその場所の生命力がアップします。

学校が再開する夏頃には、生徒たちへ菜園のお手入れなどについて直接セッションを実施し、授業内での食育やクラブ活動にも導入していく計画です。

これからも少しずつ、エネルギー溢れる学校菜園をスーダンで増やしていきます!


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