top of page

スーダンの日常は、戦時下のシリアよりきつい?


一緒に活動しているシリア人の仲間がスーダンを訪れ、「スーダンの日常生活は、戦争が始まった後のシリアよりも大変」と言いました。

戦時下のシリアに入域した訳ではない私でも、「いや、そんなことはないでしょう」と返しましたが、それはもちろんシリアのなかでもアサド政権の統治が強力な地域との比較。それでも、戦争と避難生活を余儀なくされているシリア人がそう感じるスーダン。

シリア難民の子ども達との出会いをきっかけに、弱い立場にありながら、国内外の社会から忘れられた子ども達に手を差し伸べるため発足したホープフル・タッチ。

2018年10月から、慢性的な貧困下で生活する子ども達の希望を育むため、スーダンでの活動を開始しました。

スーダンと聞くと、内戦や南スーダンの独立が記憶に新しい方も多いのではないのでしょうか。

長期に渡る内戦後、南スーダンは2011年に独立し世界で最も新しい国となりました。

内戦とはまた異なる政治的・民族的問題から2003年に発生したダルフール紛争は、世界最悪の人道危機と言われ、スーダンは1956年の独立以降、政治的な不安定さを抱え続けています。

南スーダンの独立やダルフール紛争を受け、多くの支援機関が人道支援に当たってきましたが、一方で、スーダン国内の貧困や教育、子どもの健康に関する問題は注目されにくくもありました。

スーダンの貧困率は約47%で、約73%の人口が$5.5/日以下で生活しています。

一部の富裕層と、多くを占める貧困層が二極化しており、自営業や大学講師をしている人でも、月給は2万円足らず。

為替レート(スーダンポンド/米ドル)が大きく変動しやすかったり、ブラックマーケットが横行しているのも、その不安定さを物語っています。

インフラも充分に整備されておらず、首都でさえ舗装されている道路はメインの大道路だけで、その大道路でさえ夜間の電灯はありません。排水システムがないので、大雨が降ると死者が出るほどの洪水災害になります。また、そこそこのアパートの水道水でも、普通に茶色い水が出てきます。

スーダンの学校を元気に!

特に、貧困問題から派生する教育、保健、衛生、栄養に関しては、大きな課題を抱えています。

特に市郊外の農村部に住む家族は自分の土地を所有せず、雇われた小作人として農作業をして生計を立てています。最低限の世帯収入を確保するため、多くの子ども達も家族とともに働いたり、家事を手伝っています。

そんな村々で学校を訪問すると、学校自体の貧しさを感じます。

スーダンの公立学校は基本的に授業料無料ですが、教育省から各学校へのサポートがほとんどないので、一般的に学校が独自に生徒から授業料を集めて運営費をまかなっています。

市内の公立学校では一ヶ月に100SDG(100スーダンポンド=約2USD)を集めていますが、村の学校ではこの金額を生徒が支払えないことを、教師達も充分理解しているため、10SDG(=約0.2USD)に設定しています。

ひとつの公立学校に在籍しているのは300人〜400人なので、学校が運営費として得られるのは60〜80USD/月ですが、実際には授業料をまったく支払えない生徒も多いので、一ヶ月に得られるのは50USD以下です。学校側が必要とする教材費、施設費、課外活動費などには、とても充分とは言えません。

また、授業料が支払えない生徒がいても、寛容な教師が多い学校ではそれらの生徒を受け入れていますが、その金額が払えないために登校を認めない学校や、引け目を感じて登校を拒否する子ども、教育よりも仕事を優先する子どもや保護者もいます。

スーダンの子ども達との新しいスタートを切るため、村の学校を訪問し、子ども達の学用品が不足していることや、学習環境が整備されていないことを目の当たりにしました。

今後、学校や地域の人々と相談しながら、学校を中心として、地域全体で持続可能な解決策を実践し子どもが継続的に就学できるよう計画していきますが、長期的取り組みを開始する前のトライアルも兼ね、学用品の配布と学習机・椅子の修理を行いました。

学用品の配布は、小学校2校の約600名の生徒ひとりひとりに、ノート、鉛筆、鉛筆削り、消しゴム、ペンを配布しました。

初めて学用品を配布されたため、子ども達は驚きの表情で渡されるものを静かに受け取っていました。

配布を終えた私たちが教室から出た後、歓声が爆発していたのが印象的でした。

特に学習環境の改善が必要とみられた小学校1校では、学習机や椅子の修理をしました。

屋内の教室でも床のタイルが剥がれており、机や椅子として機能できるものはわずかで、鉄枠だけ残っている机や椅子を無理やり使っていました。授業中の子ども達の集中力に影響しているのは明らかでした。

お金がないから新しいものが買えない、という発想でなく、あるものを再利用すれば状況改善できることを提案するためにも、もともとあった学習机と椅子の鉄枠をリサイクルし、1人用の机・椅子セット50組、4人用の机・椅子セット21組を修理しました。

修理はひとつひとつ学校で手作業で行いました。

書く部分のない机や座る部分がぬめた椅子が、“机”や“椅子”として機能できるようにすることが目的でしたが、ゴミとして放置されていた古い鉄材を部分的に切り取り、強度を高めるため溶接して机にくっつけたり塗装し、新品同様に蘇りました。

まだまだ根本的な貧困問題の解決へ繋がる方法は実践できていませんが、地元の人達と一緒に考えながら取り組んでいきます。


0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page