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内戦の後遺症と医療を受けられない子ども達



11年以上内戦が続いているシリア。私たちはシリア国内のなかでも、ラッカ県という場所で活動してきました。


シリア北部の主要都市ラッカは、2014年にテロ組織Islamic State(IS)により同組織の“首都”として支配下におかれ、服装、飲食、通信手段、水や電気の使用、物品売買といった基本的生活や生活秩序がコントロールされ、反逆を疑われた人は監禁、拷問、処刑、また見せしめとして市内で公開処刑されました。通信手段が制限されていたほか、各専門技術者を抱えていたISは情報操作と国際社会から非難を受ける可能性のある非人道的行為を公表しないよう、ネットワークにおけるコントロールも行なっていました。そのためラッカでの惨状は表面化しにくく、国際社会から忘れられた惨事ともなっていました。


2017年10月、アメリカ後援のクルド系有志連合によりラッカはISから解放されました。日常生活における安全性や社会秩序が比較的確保され市内の復興にも着手されてきましたが、シリアという国の中でもシリア政府でなくクルド系組織が直接的にコントロールしている、政治的に複雑な位置にあります。そのため国内外からの復興や支援が入りにくい状況が続いています。シリア政府がコントロールしている地域では、授業料が無料の公立学校や病院など社会機能が整備されていますが、ラッカは放置された状態になっています。



5年前と比較すれば日常の情勢は安定してきていますが、テロ攻撃や誘拐、殺人事件が頻発し、若者の間で急増する薬物依存も大きな問題となっています。


治安の不安定さに加え、特に社会的機能不全や経済的困窮が、人々の生活を苦しめ続けています。

貧困が慢性化し、食糧や生活用品など基本的な生活ニーズを満たすことができません。人々の平均的な月収は40ドルあまりで、一日あたり1.5ドル以下で生活しなければなりません。基本的な食糧を購入するだけでも月に100ドルはかかってしまい、常に経済的に困窮した状態になっています。



学校は内戦により破壊されたままで、教育システムは未だ整備されていません。私立の教育機関が授業や教材を提供していますが、家族の収入に比して高額で、子ども達に教育を受けさせることができず、児童労働や子どもの識字率の低下に繋がってしまっています。


経済的課題は医療においても大きく影響しています。救急搬送や子どもへのワクチン接種をWHOが支援している以外、ヘルスサービスは提供されていません。病気を患っていても行かれる病院がなかったり、高額な医薬品を購入することができず、病態を悪化させたり死に至るケースも少なくありません。



15歳のウダイくんは、5年前に内戦のなかで眼を負傷してしまいました。角膜と眼球の水晶体に傷があり、角膜を移植する必要がありますが、これまで医療的支援を受けたことはありません。眼の病気のほかに小児糖尿病も患っていますが、医療費が高いため治療は受けていません。


17歳のアブドゥルラハマンくんは、5年前の空爆により全身に怪我を負ってしまいました。右手と右眼を失い、左眼もほとんど視力がない状態です。治療用装具が必要ですがこれまで支援を受けたことはなく、心理的発達にも大きな困難さがみられます。


私たちは2022年度から、このように内戦で負傷したり病気を患いながらも、治療を受けることのできない子ども達のための活動を実施していきます。

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