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水上に浮かぶ学校、ボートで登校する子ども達


水上生活コミュニティの子ども達の希望を育むため

私達は2016年から、世界中の子ども達の平和と健康な発達を願いながら、シリア難民の子ども達の希望を育む活動を創り上げてきました。

自分達の活動を通じてシリア人の仲間も、様々な理由から困難な状況で生きる世界中の子ども達へより強く関心を持ち、自分達ができることを考えるようになりました。

アジアでの活動第一歩として、カンボジアで水上生活をする子ども達への教育支援を始めました。

場所はトンレサップ湖で知られるコンポンチュナン州の水上生活コミュニティで、陸地からボートで1時間要し、水上植物が生い茂るなど環境状況によっては他のコミュニティとの行き来が断たれてしまいます。

この辺りの地域に水上生活コミュニティがいくつかあるなかで、対象としているのは特に奥まった地域にある4村からなる遠隔地です。家々も学校も水に囲まれているため、目の前の家まで行くのにも、泳ぐかボートで渡る必要があります。

大学ボランティアチームの熱意

子ども達への教育支援は、カンボジア首都プノンペンに本校があるパンナサストラ大学ボランティアチームと提携して実施しています。

パンナサストラ大学ボランティアチームは、このコミュニティで生まれ育った大学の教授が、学生達と共に公立学校のない自分の出身地に小中学校を設置することから始まりました(2015年小中学校設立)。

教授と共にボランティアをしていた学生達ですが、子ども達の状況を目の当たりにし、活動継続を望む学生が残っていきました。

チームのコアメンバーは、大学を卒業し就職しても、住んでいる首都から5時間弱かけながら休日を利用し定期的にこのコミュニティを訪問し、ボランティア活動を続けていました。

しかし学用品の寄付や施設設置への単発的な支援はあったものの、継続的な活動をするだけの資金がなく、コミュニティを訪問したり活動の運営に必要な費用は自ら支払っていました。

メンバーひとりひとりが様々な人生経験をもち、だからこそ困難な境遇にある子ども達の状況と思いを理解し支えようと頑張っていましたが、自分達も家計を支え働くなか、ボランティアにかかる支出も負担になっていました。

一方で、せっかく設置した水上の公立小中学校でしたが、登校手段がなく登校できない/定期的に出席できない子ども達がいました。ある家庭が自身のボートで近所の子ども達を集めて乗せて登校させる場合もありましたが、特に遠方に住む子ども達は共有できるボートもありませんでした。

登校手段がないため、子ども達や保護者の就学へのモチベーションが下がっていることもわかりました。

せっかく派遣された小中学校の先生達が、生活環境の悪さから水上コミュニティから去ってしまうこともありました。

カンボジアでは一般的に、教員免許を取得した先生は自分の出身地に派遣され、出身地の公立学校に勤務します。しかしこのコミュニティから教師が育っておらず、派遣されたどの先生達も、この地域で生活するのは初めてでした。

また教師としての賃金は充分でなく、学校での教材・活動費も支給されず先生達が自ら支払わなければならず、負担に感じていた先生もいました。

これらの課題に対しメンバー達は、子ども達が継続的に登校し、勉強できる環境づくりに試行錯誤していました。

いっしょに考える

このような状況にある子ども達、そしてボランティアチームと出会い、話し合いを重ね、彼らにとっては初めてとなる“継続的”な活動を一緒に計画し始めました。

お互いに“初めて”が重なる活動になるため、まずは2018年1月~6月のパイロット事業を実施してみることにしました。

登校手段の課題については、子ども達や保護者の就学へのモチベーションを高めるため、通学船を運航しました。

通学船により、登校する子どもの数や定期的に出席する子どもの数が増えたほか、学校用通学船があるため先生達が家庭訪問でき、保護者との関係づくりにも役立ちました。

先生達に対しては、ボランティアチームが毎月定期的に訪問し、コミュニケーションを大切にしながら信頼関係を築き、先生達が困っていることを気軽に話せる関係性をつくりました。

先生達は特に自分の教師としてのスキルアップを求めていたため、要望に応えながら毎月研修を実施しました。研修は、大学の教授を招いたりボランティアチームのメンバーがそれぞれのスキルや職歴を生かして実施しました。

6ヶ月間のパイロット事業を終え、先生達に意見を聞くと、

「より多くの子ども達がちゃんと登校してくれるようになり、自分自身もやりがいを感じるようになりました」

「教師として難しいことに挑戦していると思いますが、それだけに自分が向上して達成感を感じるようになりました」

「学校がちゃんと運営されていて、なによりうれしいです」

という声が聞かれました。

チームメンバーは、

「最初は先生達が、メンバーのことをスーパーバイザーか、なにか上の立場であるように接していて。。。繰り返し、自分達は“友達のような存在で何でも話してもらって構わない”と伝えました」

「ここでは、最近まで電話も繋がらなかったので、連絡の取りようもなかったんです。最近電話が繋がるようになったので、何かあればお互い連絡していて、身近に感じてもらえるようになりました」

「これまで単発の寄付や訪問してもらえることはあったけれど、継続的に何かをするということは初めての挑戦でした。子ども達も先生達も、誰かが長く気にかけてくれているっていうことだけで、なにか希望を持てたり、モチベーションが上がるんだっていうことに気づきました」

「先生達には、“ここで残ったら、誰も成し遂げられなかった新しい記録を自分達が残せるかも”という思いがあるみたい。」

と話していました。

彼ら/彼女らチームメンバーは、このコミュニティの人々にとって信頼でき、なにかちいさくても希望を与えてくれる存在になっていることを、実際の訪問で強く感じました。

だからこそ、コミュニティの人々は日常的に学校の設置や維持に力を貸したり、先生やチームに食事を持ってきたりと協力する習慣ができていたのだと思います。

先生達には、“ここで残って頑張ったら、誰も成し遂げられなかった新しい記録を自分達が残せるかも”という思いがあるようで、楽しんで挑戦している熱い青年達のような印象を受けました。

ボランティアチームと先生達の熱さレベルが、ちょうどいいように同じぐらいで、しっかり仲間になっていました。

彼ら/彼女らと共に頭をひねりながら活動を続け、これからは、このコミュニティがもつ力を生かし、コミュニティ自体で持続可能な子ども達の教育・発達促進ができるかたちを考えていきます。


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