お母さん達への職業研修(シリア)
- Miho Takada
- 5月12日
- 読了時間: 3分
私達のシリアでの活動はこれまで、子ども達を対象として実施してきました。
この度2025年4月から新しく、障がいをもつ子ども等のお母さんを対象とした、就労支援を開始しました。
活動地であるラッカ県における人々の生活は、現在も困窮を極めています。
貧困率を測ることはできていませんが、内戦時から続く経済的困窮は、2024年12月のアサド政権崩壊後もあまり改善がみられていません。
私達が理学療法を提供している子ども達の、保護者の方々に対する聞き取り調査によると、平均的な世帯月収は約80USDで、32%が母子家庭、一世帯あたりの子どもの人数は平均4人でした。
障がいや病気をもつ子どもを抱える家庭の経済的負担は大きく、家族全員の基本的生活を維持するために、否応なく継続的な医療費が削られてしまうことも少なくありません。
女性より男性が就労することが一般的な社会ではありますが、基本的な生活を送りつつ子どもの健康を支えるためには、就労せざるをえないと考えているお母さんの声が、ここ数年多く聞かれるようになりました。
長引く人道危機のなかで、人々の支援に関するニーズは現在も非常に高いのですが、長期化した内戦、世界中で起こっている人道危機の増加、政治的複雑さ、資金不足などにより、ラッカ県における事業から撤退する支援団体が年々増加していました。
今後、新政権による社会福祉機能の整備が必須ですが、現状は未だ内政としての優先事項が山積みです。外部支援が限られるなかで、障がいや慢性的な病気を抱える子ども達の脆弱性は拡大し続けてしまいます。
子どもの障がいや病状はそれぞれ異なりますが、多くのケースにおいて、今後も継続的な医療的介入が必要になることが見込まれます。
子どもの状態や社会的状況を懸念し、お母さん達から職業訓練を受けたい、という要望をいただいており、やっと今年度開始することができました。
対象地の多くの方々にとって、安定した職に就くことが難しいなかで、今回はお母さん達を対象としています。
その理由として、子どもの継続的な医療・福祉のために、積極的な要望をあげていただき、就労への意欲が高いことのほか、これまでの診療・理学療法などに付き添い、子どもに対する家庭での対応方法を学び、実践・継続力が高いことも挙げられます。

講師である美容師からオリエンテーションを受ける母親達
就労への第一歩として、職業研修から開始しました。
研修コースは、対象地の女性にとって働きやすく、就労経験のある方もいらっしゃる職業であり、要望として挙げられていた縫製と美容としました。
基本的には希望に応じてどちらかのコースを選んでいただき、合計30名の方に、週8時間6ヶ月のコースに参加していただきます。

縫製コースで採寸の練習
研修修了後は、実際の就労に向けたサポートも見込んでいますが、まずはそれぞれのコースで基本的な知識や技術を獲得していただくことを目指しています。
私達はこれまで、障がいや疾患をもつ子ども達への直接的な支援(診療・義肢などの補装具・理学療法の提供、心理社会的支援)を中心としてきました。
しかし特にこのような子どもをもつ、母子世帯を含む低所得世帯の生活状況は逼迫しています。この状況を受け、家庭の経済状況の安定化が、これらの子ども達の健康な発達を継続的に保護する一要因になると捉えています。
なお、子ども達への支援も引き続き実施していきます。
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