人道的な?食糧・衛生品支援?

August 30, 2017

緊急人道支援としての配布事業

 

緊急人道支援において、最も想像しやすいのが食糧配布支援ではないでしょうか。

安全に留まることのできる場所の確保とともに、人間の誰もが食糧を必要とします。

シリア戦争勃発から6年以上が経過した現在も、トルコで避難生活を送るほとんどのシリア人家族が、支援団体からの食糧支援に頼らざるを得ない状況にあります。

 

2年ほど前まではまだ多くの支援団体が、基本食品を詰め込んだ食糧バスケットを配布する、いわゆる現物配布の事業を実施していました。

 

しかし“食糧支援”の形は変化し、現在の主流は日本の電子マネーカードのように、各シリア人世帯に電子バウチャーカードを配布し、家族の人数などにより一律に設定された金額がチャージされる形式となっています。チャージされたカードにより、シリア人世帯は規定のマーケットや商店において、食品や衛生品を購入することができます。

 

 

システム化される支援

 

特にトルコに対するEUからの莫大な難民支援金により、トルコ政府はTurkish Red Crescent(トルコ赤新月社; TRC)を通じ、データ上で登録されたシリア難民世帯への電子バウチャーによる食糧支援を大規模に実施しています。食糧だけでなく、衛生品などの生活用品も購入することができます。

 

しかしTRCによる支援は、トルコに避難しているすべてのシリア人家族が対象となっている訳ではありません。規定の支援条件項目があり、それぞれの項目への適合により、脆弱性の高い世帯と認められた世帯のみが支援を受けることができます。

例)子どもの多い世帯、障がいを持つ人がいる世帯、寡婦世帯など

 

TRCからの支援を受けるためにはシリア人世帯自身が申請する必要があり、またこの申請以前に難民登録を更新しなければならないなど、複数の手続きと書類提出、長期化する審査期間を要します。

 

300万人以上のシリア人が避難生活を送るトルコでは、大規模にシステム化された支援体系は必須条件となっています。

しかし、現場を実際に訪れ、個々の世帯情報を直接聞き取りながら、ある程度柔軟に対応する支援機関は減少し、本当に支援が必要な家族が見逃されてしまうケースも発生しています。

 

 

子ども達に、シリア人家族に適した配布とは…

 

私たちは現在、子どもの保護を中心とした活動に注力していますが、現場で活動しているメンバーはみな、緊急食糧・NFI(Non-food Item; 衛生品や生活用品)支援の経験があります。

そもそも緊急食糧・NFI支援では、基礎的な支援に留まり子どもの心身の発達や健康を考慮した支援が実施されにくい現状があった上、昨今のシステム化されたゆえの支援形態の煩雑さに、歯がゆさも感じていました。

 

私たちができることは本当に限られていますが、少しでも子ども達の健康な発達に貢献できるよう、運営しているの2つのテント教室に通う子ども80名を対象に、食糧配布および衛生品の配布を実施しました。

現在主流の電子バウチャー支援とは程遠く原始的な現物配布ではありますが、より健康な発達を支えることを意識した食糧バスケットと衛生品キットを考案しました。

 

対象としている貧困層のシリア難民の家庭では、安価で基本食品となる小麦粉や食用油など、炭水化物や脂質に偏った食品の入手が中心となります。栄養バランスに配慮した食品を購入できる余裕はなく、また本来シリア人の食習慣が炭水化物と脂質に偏りがちな傾向もあります。

 

エネルギー補給だけでなく、子どもの心身の成長に必要なタンパク質やビタミンも摂取できるよう、食糧バスケットにはツナ缶、鶏肉ソーセージ缶、牛乳、ビスケット、スープ付き乾麺などを盛り込みました。これらの食品はシリア人の食卓に日常的に登場する上、配布における衛生上の安全性も比較的保たれています。

ビタミンは、1年間に5回配布するマルチビタミンシロップからも補給されています。

 

配布物としての衛生品の種類は限られていますが、安価で質の悪いものでなく、一般的な質が保たれた商品を選択しました。これは以前、村で生活するシリア人家族から聞いていた話ですが、大手の支援機関から衛生品を配布されたが、村で配布するためか、どれも質が悪く使い物にならなかった、量は少なくてもいいから、一般的な質のものを配布してほしい、とのことでした。

 

最低限の衛生品を配布するなら/遠隔地でそもそも衛生環境が悪く、テントで暮らしているような世帯へ配布するなら、安価の品を大量に配布したほうがいい、という発想が支援機関のあいだで残っていたことは、100%否定できません。

 

こういった率直な意見を参考に、量だけでなく質も考慮した家族で使用できる品々を衛生品キットに詰めました。石鹸やシャンプー、歯磨き粉、歯ブラシ、女性用衛生品、カミソリ、髭剃り用クリーム、手洗いで使える衣類用洗剤(洗濯機を所有する世帯はほぼないため)や食器洗い洗剤液のほか、シラミ予防シャンプーも含めました。

 

シリア人家族のニーズと子ども達の健康、団体側のキャパシティなど、すべての要素が完璧に満たされることは難しいなと実感しつつ、ある程度のバランスが取れる点を探る作業は、常々必要だと感じています。

 

一般的にも「人道緊急支援」とよく耳にしますが、“人道”的な支援が本当にできているのか、可能なのかを考え始めると、未だ悶々とするばかりです。

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