水上コミュニティの先生達の変化


カンボジアの水上コミュニティで実施している先生方へのトレーニング。

月例の現地訪問によるトレーニングのほか、先生方を首都プノンペンに招いて各専門家によるレクチャーやワークショップにも参加していただいています。

2月に実施したプノンペンでのトレーニングでは2日間に渡り、次のようなテーマのプログラムに参加していただきました。

【教育とモチベーション】

1年間の活動を通じて、トレーニングでも繰り返しピックアップしてきたのが、生徒、保護者、先生の教育に対するモチベーションの継続と向上です。このテーマのなかでも、立場によって課題は異なります。

生徒にとっては、陸地から離れた小さな水上コミュニティのなかだけでの生活で、大学を目指すイメージは描きにくいのが実際です。昨年初めて高校へ進学する生徒が誕生し、プノンペンの大学訪問を通じて目指すゴールが見えてきました。

しかし経済的により一層困窮してきたこのコミュニティでは、保護者の季節労働に合わせて子ども達も一時的に移住せざるをえなくなっています。その期間も勉強を続けられるか、ドロップアウトせずに復学できるかは、未だに課題となっています。

保護者の方々の意識は、活動を通じて大きく変化してきています。

大学訪問をしたり、大学生からいかに経済的困難のなか勉強を続け成功してきたかの話を聞くことで、自分の子ども達もぜひ大学へ進学させたい、という思いは強くなっています。コミュニティ内で市民活動として、住民グループが子ども達の教育のため寄付を募るという動きもあります。

一方で、家族の基本的生活を守っていくためには教育を中心に考えていく難しさも吐露されています。

先生方はもちろん、子ども達の継続的な教育を実現する強い想いはあります。しかし全員の先生方が他の地域から派遣され、住み込みで小学校・中学校に勤務しているので、このコミュニティでの地域的課題に直面しながら生徒や保護者に働きかけを続けていく手法に悩みもあります。

今回のトレーニングでは、実際に生徒がドロップアウトしていまいそうになったり、保護者が子どもの登校を諦めようとした時、どのような対応方法があるのかロールプレイを含めて考えました。

これまでのトレーニングから、継続的な教育の重要性や対応方法の様々なオプションを学んできた先生方ですが、実際の自分の対応方法に対して専門家からアドバイスを受けるという経験は初めてでした。

トレーニング開始当初と比べると、まず先生方が「家庭訪問をし保護者や生徒と面談をする」というコミュニケーションが“基本”と認識されている傾向がみられました。

初めは家庭のことにはなかなか関われない、自分もこの地域にとってはよそ者だから口出ししにくい、と話していた先生方でしたが、積極的な関わりを前提とする意識に変化し、先生方が地域の方々と良好なコミュニケーションを取れてきたことが明らかでした。

保護者を説得するというよりも、休学期間が生じてしまっても復学できる選択肢を保護者と話し合うという、当事者寄りの対応ができるようになっていました。

【チームワーク】

他地域から集められた7名の小学校・中学校の先生方にとって、様々な課題に直面し改善方法を考えていくためには互いの協力が必要になってきます。自分の意思でこのコミュニティに配属された訳でもなく、厳しい環境に対応していかなければならないため、配属当初は自分が子ども達の継続的な教育を実現していこうとは感じられないのが現実でした。

教育省へ相談しても、なんの解決にもならないと諦めていた先生方ですが、活動を通じて実際に生徒の欠席が減ったり保護者の方々の意識が変わってくると、先生方のモチベーションも上がってきました。

今回のトレーニングでは、チームワークや協力関係がもたらす成果についてゲームやアクティビティで学びました。

活動当初は意見を発さなかったり、一部の先生の方法を受け入れるのみの若い先生方も垣根なく楽しんでいました。

年齢や経験がより豊富な先生は、「自分が全体を指揮して先導していかなければならないと責任感を感じていたが、ひとりでは実現できない。みんなで協力していきたい」と発言し、先生ひとりひとりの積極的な関わりが促されていました。

【活動のふりかえりと今後の目標】

2019年4月から実施している先生へのトレーニング。これまでは事業を運営するスタッフが活動の評価や計画を実施してきましたが、子ども達の継続的な教育に対する先生方の貢献度の高さから、スタッフと先生が同等の立場で、これまでの活動のふりかえりと今後の目標について話し合いました。

[活動のふりかえり]

“活動で達成できたこと”をブレインストーミング形式で先生達に自由に書き出してもらうと、どんどんと挙がってきました。それらの意見を先生方自身にグルーピングしてもらい、挙げられたポイントが次のようにまとまりました(主なポイントのみ掲載)。

①生徒の変化

・出席率が上がった

・理解力が上がった

・保護者の季節労働で一時的に休学した生徒がドロップアウトせず復学した

・校内の清掃をするようになった

②保護者の変化

・以前より関わりが増えた

・話しやすくなった

・子どもができるだけ勉強を続けて欲しいと感じるようになった

③コミュニティの変化

・コミュニティの行政機関と良好な関係を結べるようになった

・教育に対して市民グループで対応しようという動きができた

[今後の目標]

活動のふりかえりでは、あえて問題・課題ではなく先生自身が達成できたことを挙げてもらいました。活動期間に政府からコミュニティの強制移住があり、先生方のあいだでは自分達ではどうにもできない問題ばかり、という意識が未だに強くあります。しかし改めて実現できたことをまとめてみると、大きな結果を上げられたことを実感でき、喜ぶ声が聞かれました。

今後の目標としては、これまで上げてきた成果を継続していくほか、具体的なアイディアが挙がりました。

・子ども達が学習以外で楽しみながら学べるレクリエーション活動を実施する

・少しでもコミュニティ(学校)の経済的困難に取り組む活動を始める

・生徒や先生の生活適応スキルを上げる

これらの意見から、来年度の活動を計画していくことを次の課題としトレーニングは終了しました。

今回、初めて活動全体に対して先生方に考えてもらい、たくさんのコメントやアイディアが出され、自分達でできた/できるポイントを分析的に検討できました。

先生方の積極的な姿勢にスタッフも大きな刺激を受けました。

これからもスタッフと先生が同等の立場で活動に取り組み、子ども達の教育を実現していきます。

※この活動は、草の根市民基金・ぐらんの助成により実施しています。


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