“「トルコのシリア難民」子どもたちとの現場から まなびとアートを通して、多世代・多文化交流へ”と題し、2月16日にKOBE須磨きらくえんにてトークセッションを実施しました。
主催は、アートを通じて地域の多世代交流の場づくりを進めている「神戸でみんなでアートしよう!!」さんです。
今回のイベントのきっかけは、トルコにおけるシリア難民の子ども達の発達支援を通じて生まれた、子ども達の絵でした。
難民の子ども達と直接的な関わりの多い私達は、子ども達が描く絵からも、彼ら/彼女らの成長を身近で感じていました。
難民として生活し、特に学校に行く機会のなかった多くの子ども達にとって、私達が運営するテント教室が社会参加の第一歩となります。初めは無表情・無反応の子ども達。ほとんどの場合、自由に絵を描いていいと言われても、鉛筆を握り紙を前にして呆然とするばかりです。色をどう使っていいのか、真っ白の紙に何を描いていいのか、小さな手に託された“自由”が、“制限”に囲まれた彼ら/彼女らにとっては、どう扱っていいのかわからない“不安”であるかのようでした。
そんな子ども達でも、月日を重ねることで無限大の表現をするようになります。
初めは点や線、紙の端っこの歪な丸から始まり、図形や模様、キャラクターの模写、自分の発想から生まれる家、テント、花、ひと、戦争や避難の記憶・イメージ、避難生活の様子、広大な自然…と、表現が膨らんでいきます。
子ども達の胸の内にあった想いやストーリー、彼ら/彼女らの生きるエネルギーが、絵を通じて溢れ出してきます。
「神戸でみんなでアートしよう!!」さんでは、六甲山の自然の豊かさを再発見してもらおうと、地元の子ども達や保護者の方と共に紙芝居上映や創作活動を実施されています。おとなも子どもも一緒になって、身の回りの自然や地域の素敵な要素を、アートを通じて発見し、楽しむ活動をされています。
シリア難民の絵をお見せしたことをきっかけに、アートを通じた国際交流の企画が持ち上がりました。
今回のトークセッションでは、「神戸でみんなでアートしよう!!」代表の久木田啓氏、「KOBEスマイルプロジェクト」代表の中川由紀子氏、アートを通じた子ども達とのワークショップをファシリテートしている造形作家の今井杏奈氏と共に、来場された他職種の方々を迎えお話をしました。
もちろん、“アートで国際交流できる?”という可能性を探りながらも、話題はシリアや日本の子どもや親子、子どもの発達、自己表現、ヒューマンライツ、自由と抑圧、日本社会、コミュニケーションなどなど多岐に渡りました。
アートを通じると、国籍や背景を超越して同じ“ひと”として繋がり、共通点が見えてきたり発見に気付きやすくなり、バラバラにみえる話題も網目で繋がる全体の一部のように浮き上がってきました。
なかでも、子どももおとなも、世界のどんな場所に生きていても、互いに比べられないような制限や抑圧を目の当たりにしていること、そんななかでも“自由”を実現できるひとつの手段がアートであることは、当たり前のようで大きな再発見でした。
シリア難民の子ども達が描いた絵と、神戸の子ども達が描いた絵を囲むだけでも、それぞれの“自由”なエネルギーを感じることができました。
シリア難民の子どもやおとなは、未だに様々な制限と抑圧のなかにあり、今後もなくなることはないかもしれません。
それでも、生きるエネルギーいっぱいの子ども達が少しでも自由を実現し、夢や希望、望みをもつこと、それが“楽しい”と感じることがふつうになることを目指してもいいのかな、と感じられる時間でした。
これからも、アートを通じた国際交流の可能性を探っていきます!